
佐久に来て少し経った頃、日に日に何か寂しい感じがした。何が寂しいのか良く分らなかったけどようやくその理由が分った。それは富士山が見えなかったからだ。佐久に来る前は色々な所に住んだけど共通点があってそれは富士山が常に見えるということだった。といっても家の窓からというわけにはいかない。でも少し歩いたりすると見える場所に行くことが出来た。
俺にとって富士山が故郷の山だったのだ。故郷の山というには遠すぎるけど、小学校上がる前から知ってる山の名と言えば富士山しかなく、それが見えればたとえ住んでる場所が山梨や静岡でなくても故郷の山というわけだ。
実際俺は府中に住んでる頃はそこから富士山まで歩いて行けるもんだと思っていた。当時南武線の府中本町駅の西側には田んぼと畑しかなかったので富士山が良く見えた。そこに母と散歩で行った時、今度は富士山に行こうと言ったのを今でも覚えている。
佐久近辺からも見えないってことはないけど山に登らないと見ることは出来ない。そしたら小海町にある松原湖から富士山が見えたのだ。野辺山からは富士山や南アルプスが良く見えるけど、まさかその手前の山のてっぺんでもない所から見えるなんて思ってもみなかった。春の風で湖面は何時もさざ波が立ってたけど風が暫く止んで鏡のように静かになった湖面に映った所が撮れた。
